雑文

他宅監視員の雑記帳

富士山とか郊外でMVNOの電波を入りやすくしたいメモ

先日、富士山に向けての練習がてらに高尾山に登ったのだが、電波が入らないところが結構あった。

何が本当の問題か

僕はNexus5にMVNOであるiijmioのSIMを利用している。

iijmioはドコモ回線を間借りしているので、基本的にカバー領域は同じはずだ。

ではなぜMVNOは電波が弱く感じたりするのだろうか。

MVNOの深イイ話:MVNOの電波は「弱い」のか? - ITmedia Mobile

これを読むとわかるのだが、MVNO の電波が弱いという経験知は、実は仕様上はありえない。

問題は、 MVNO 業者の設備における混雑による速度低下と、グローバル端末の事情による、エリア対策用帯域の無視という 2 点になる。

そう、電波の掴みやすさは本来全く同じなのだ。

MVNO(格安SIM)通信速度は大手キャリア程通信速度が出ないって本当なのか!? | MVNO初心者の為の徹底解説ブログ!-エリアフリーモバイル-

1 点目の混雑による速度の低下だが、配信に限って言えば大差はなさそうだ。

一般的にMVNOの混雑は昼休みの時間帯になるのだが、Upload の速度はそこまで変わらず、 コンスタントに4M 程度は期待できそう。

(ニコ生で使える帯域は 384kbps までだから、4Mあれば十分に思うのだが、実際どうなのだろう?ちょっと経験がないので自信はないけど。)

とすると、 2 点目の問題の、郊外や山間部で利用されるエリア対策用帯域が使えない、SIM フリーなグローバル端末の事情が一番の問題となる。

つまり、どれだけ LTE を掴めるかのほうが品質に大きく関わっていると思われる。

LTEの話

Long Term Evolution - Wikipedia

ドコモ系MVNOの周波数帯をまとめてみた!

LTE の電波は、それぞれ特徴を持った複数の Band で構成されている。

このなかで 800MHz の Band19(以下 B19)が今回の鍵となる。

ここで富士山の B19 のエリアを見てみることにする。

NTTドコモ -エリアマップ-

この図における FOMA プラスエリア部分が B19 にあたるが、ちょうど頂上付近の半分と、下山道にて問題があることがわかる。

なんとかしてグローバル端末で B19 を使えるように改造しなければならない。

ところでなぜこの帯域を、グローバル端末業者は削ってしまったのだろうか。

どうやら B19 と B20 が同時に利用できないという事情があるようだ。

どちらも 800MHz を利用しているが、通信方式が違うためか、同じ端末で共存できない。

つまり、 グローバル端末の設計において、世界中の郊外山間部をとるか(B20)、日本の郊外山間部を取るか(B19)、という縛りに直面し、合理的に考えて世界の側を取ったということなのだろう、たぶん。

List of LTE networks in Europe - Wikipedia, the free encyclopedia

EU の LTE のバンドリスト。やっぱり B20 がたくさん使われている。

List of LTE networks in Asia - Wikipedia, the free encyclopedia

これは Asia のリスト。見事に B19 は日本だけだ。

Nexus 技術仕様 - Nexus ヘルプ

僕が使っている Nexus5 の仕様によれば

LTE: 対応バンド: 1/3/5/7/8/20

となっている。これをせめて日本にいる間だけでも B20 の部分を B19 にしたい。

そして海外行くときまた戻せるようにもしておきたい。

B20を殺してB19を有効にする

【LTE B19】Nexus 5(LG-D821)のNTTdocomoプラスエリア(800MHz)対応化について | AndMem

Nexus5 の B19 対応の手順がある。すごい。

猿でもNexus5をLTE Band19に対応させるスレ

ココも参考にした。なぜか、僕は日本から出ることはない的なBand選択してるので、そこは注意。

……できた。具体的作業は割愛。

すごくめんどくさいし、リスクだらけなので普通はやらないほうがいい。

お金がある人は、ドコモや AU のキャリア端末を使えば解決するからだ。

キャリアとの差

富士山山頂で、日本最速のLTE通信が始まった | KDDI NEWS | KDDI ナウ | 明日をちょこっとHAPPY!にするデジカル系情報マガジン TIME&SPACE(タイムアンドスペース)

AU の富士山 band は 800MHz,2GHz 、つまり B1,B19 が強化されてるようだ。

docomo端末でのLTEの周波数帯(Band)一覧

ちなみにドコモ端末の Band 対応状況はこれ。
さすがにバッチリ対応してる。

LTE速度調査 1位は下りドコモ、上りソフトバンク :日本経済新聞

ちなみにドコモや AU などのキャリアと比較すると、Upload に関しては、約 7M と、 MVNO の 約 4M という差だ。

この差自体は、そこまで影響しないのではないかと思うのだが、大きい方が安心感はある。

VoLTE非対応であることの問題(ついでに)

そもそも800MHz帯を、ABCの3バンドに切り分けて、ABのみ利用するのがB6、それにCを追加し、ABCを利用するものがB19になる。

これはLTEに関してはその通りで、B19さえ対応していればFOMAプラスエリアと通信できる。

が、問題は3G(W-CDMA)だ。

FOMAプラスエリア (W-CDMA 800MHz) のBand6に対応していない端末は買わないべき? - MVNOナビ!

VoLTEに対応していない(Nexus5みたいな)端末の場合、音声通話するとき3Gに切り替わる(CSフォールバック)。つまりW-CDMAのB6だ。

よって、W-CDMAのB6が使える端末なので、音声通話は可能なのだが、LTEを掴み直すタイムラグが発生してしまうので、各種連絡は音声通話ではなく、LINEなどの別の手段を使うようにしたい。

結論

結論としては、素直に金払ってキャリア端末を使えってことになるのだが、個人的には改造した端末で MVNO 使えねー説に一矢報いたい感じ。

以上。

生主とは何か――偶然を含む相互作用の回路

生主とは何か――偶然を含む相互作用の回路

はじめに

ひろゆき氏がニワンゴ取締役を降りたようだ。

ひろゆき氏が取締役退任–ニコ動、ドワンゴに対する数々の苦言残し

ニコニコ生放送」や「ニコニコ超会議」などに苦言を呈していたが、それも一因なのだろうか。

ユーザーが欲しいものを提供するはずが、「こういうユーザーが欲しい」に変わっちゃう話。


直接の原因が何なのかはよくわからないけど、 まあ多分「多様性を軽視し始めたニコニコの運営方針を見限った」といったところだろう。

今から2年近く前の話だが、ひろゆきが大会議についての問題意識を持っていたことは、よく知られていたことだしね。

生主討論会2 で気になったところの発言まとめ

そこで今回は、ニコニコの公式生放送(以下「公式生」と省略)を始めとした運営の方針が、 なぜイケてないのかについて、ニコ生(=ユーザー生放送)の視点から説明していきたい1

生主とは何なのか

とりあえず辞書的には、ニコ生をしている人のことを「生主」と呼んでいる。 これは、動画をアップロードした人を「うp主」と呼ぶのと同じ考え方だ。 ただしこの呼び方は、ほぼニコニコ内部で使用されている用語で、 他の配信サービス(USTREAM、Justin、Stickamなど)まで視野を広げると 「配信者」といった表現が使われているようだ。

これらのニコ生以外の配信サービスは「外部(配信)」と呼ばれており、 少なくとも、(ユーザー生が始まった2008年12月12日から現在までの)約4年間余り、 個人配信の中心地は、ニコ生であり続けていることは間違いないだろう。 (ただし、Peercastはニコ生の原点のような立ち位置で、「外部」とはあまり呼ばれない。 また、PCを所有していないユーザー層は TwitCasting が中心地として機能している。)

まあ、このへんはいいだろう。

おそらくみなさんの興味は、殊更僕が主張しようとしている、 「生主」とは実のところ何なのか? ということだと思う。

「目立ちたがりの素人」「勘違いニート」「メンヘラの巣窟」…… まあそんな印象を持ってる人は多いと思うが、 目立つ部分だけで全体の印象を決めるのは良くないよ、と指摘しつつ、 今回は、「面白さの仕組み」について説明するのが目的なので、 そういうのは無視して進めていきたい。

公式生では、ステージに耐えられるような芸を持つ人が、基本的にはもてはやされる。 たしかに運営者にとって扱いやすく、安定感も有る人材は、 限られた場所と時間の中で、ある程度の質の放送を成立させるためには必要な資質だろう。

しかしそうした視点は、ニコ生の生態系を考える上では些細な話だ。 生主というのはなにか「芸」があってこそだと勘違いしがちだ。 特に、ユーザーが作った「番組」として捉えている場合、 そう考えてしまうのも無理はないと思う。 しかし実のところ、生主個人の持つ「芸」に、たいした意味は無い。 強いて言えば、「キャラ付け」程度の意味は持っているが、 その「芸」自体が、他の芸能と比較できるような大層なものでは全くない。

では、ニコ生を考える上で着目すべき点はどこだろうか。 それは、生主やリスナー(=配信を見ている人)による、強烈な「相互作用」だ。 その作用は、配信画面上における「生主・リスナー間」、そして、 Skypeやリアルを媒介とした、「生主間」において起きるダイナミックな作用だ。 そこでは、1対多というそもそも飽和したコミュニケーションの仕組み、 そして見かけ上1対1にも関わらず、多数のリスナーによって歪曲される力関係が、 不確実性や偶然性を引き込み、配信自体をダイナミックに変化させる。 実は、それを引き起こすアーキテクチャ自体が、ニコ生が強烈なコンテツとなっている理由であり、 その公式生では難しいメリットを、最大限引き出しているのがユーザー生なのだ。

と、結論めいたことを書いた上で、これから解きほぐしていきたい。

中途半端な「表の顔」

元々、ニコ生がユーザーに開放された時に運営側がイメージしていたのは、 動画の投稿者らが生放送をする光景だったのだと思う。 つまり、「歌ってみた」「演奏してみた」のような、 「見れる芸」を持つ動画の投稿者が、生放送を牽引すること期待したのだろう。

またその一方で、公式生では、地上波では見られないような面白い番組が多くある。 特にニッチなジャンルの番組は、「低コストな生放送環境」があってこそのものだろう。

これらは、ニコニコ生放送の「表の顔」だとは思うが、やはり捉え方としては、どこか古臭い印象だ。 「低コストな生放送環境」にTV番組的なものも組み入れちゃいましょう、とか、 現場を知らない偉い人が、会議室で考えてそうな感じだよなぁ、とか思ってしまう。

ニコ生を特徴付ける、2つのコミュニケーション回路

それでは次に、公式生とは全く違う側面である、 ユーザー生の生態系について、整理していこう。

ユーザー生では、ピーク時で同時に5500余りの配信が行われている。 これを書いている今も、配信開始のモニターを眺めながら一呼吸するうちに、3~4個の配信が始まっている。 これら無数の配信の中では、どうでもいいコメントから、Skypeを使った喧嘩まで、 様々なコミュニケーションが大量に交わされている。 ここではそれらの回路を、その主体に着目し、ざっくりと2つに分類してみようと思う。

まずは「配信画面」を媒介とした、 生主とリスナーとのコミュニケーション回路 である。 生主のみせる映像と、リスナーによるコメントという相互作用は、ニコ生での基本アーキテクチャだ。 このときのリスナーの動機は、「コメントを読まれたい」という欲求に始まり、 しばしば「配信の流れを面白くしたい」という領域にまで至る。 そうしたリスナーのアクションに対し、生主は、画面上で返答する形でコミュニケーションを取る。 そして、場合によっては行動によって示す(これが行き過ぎると生主に「ラジコン」属性が付く)。 この亜種としては、リスナーから「Skype凸待ち(Skype通話を受け付けること)」という回路もあるが、 とりあえず今回は、生主とリスナーの間のコミュニケーションということで、ここに分類しておこう。

もう一つのコミュニケーション回路が「Skype凸」や「リア凸」を媒介とした、 「生主同士」のコミュニケーション である。 これらは通常、「絡み」とか「コラボ」などと呼ばれ、 討論会などの手の込んだ企画をやることもあれば、 ただカラオケに行って配信するだけのこともある。 (この時リスナー側は、マルチアングルのように、各生主の配信画面を複数開くことで、 より深くコミットできるようになる)

もし3つめの回路があるとすれば、掲示板によるリスナー間のコミュニケーションもあるが、 どちらかというとコミュニティの周辺を補強する立ち位置のメディアであって、 回路としては細いのではないかと考え、今回は外すことにした。

生主のキャラ付け

こうした複雑なコミュニケーションは、日常的に行われているが、 それらを可能とする基礎となっているのが、「キャラ設定」である。 「キャラ」とは、コミュニケーションの場において、 どんな振る舞いをするかの類型のことをいう。 これが立っていると、コミュニケーションがスムーズになる。 そして、特に生主の場合、「キャラ」をあくまでニコ生をする上での「設定」と捉え、 リアルにおける「キャラ立ち」よりも恣意的なものとして扱っているようだ。

また、生主はキャラ付けの一環として「芸」をすることがある。 何かの出来事に対し「どんな反応をするか」といった、 リアクションの特徴を意味する。 これは、日々の雑談配信やゲーム配信によって、 リスナーによって見出されたりする過程で、より強固なイメージを獲得するに至る。

ここで重要なのが、それはステージ上でやる「芸」では決して無いし、 宴会「芸」ですらならないということだ。 要するに、「歌ってみた」「踊ってみた」などの、 わかりやすい芸を持っている必要は、全くないということだ。

そしてもう一つ、生主間の「派閥」である。 これは政治における派閥とほぼ同じ意味で、 似た価値観の者がセグメント化している。 ただし、現実の利害関係に必ずしも即したものではなく、 「配信の方針によるグループ」 程度の意味で考えたほうが良いかもしれない。 (「雑談」「声真似」「ゲーム実況」といった配信のジャンルと、 若干かぶってくることもあるが、ジャンルを行き来することも多いため、 この場合は余り適切ではない) この「派閥」の存在が、リスナーに帰属意識を持たせ、 派閥抗争ゲーム的な展開が見られるようになってくる。

以上、こうした基礎的土台があることで、コミュニケーションが加速していくわけだ。 個人の配信で、リスナーとの間に「キャラ」が認知されれば、 その後の他の生主との「コラボ」がしやすくなる。 そして、互いを潰さないような工夫しつつ、ある程度のアドリブも可能となってくる。 こうした「キャラ」や「派閥」に裏打ちされた「コラボ」は、 既存リスナーを楽しませ、なおかつ新たなリスナーを拡大する手段でもあり、 実際に多くのリスナーの衆目を集めているわけだ(そう、ただのカラオケでも!)。

生主のスキルは、どんな場面で判別できるのか

ニコ生の面白さがコミュニケーションであるならば、 いわゆる「コミュ力」が力量の指針となるのだろうか。

いや、それは誤りである。 生主はどちらかと言うと、ネットの住人が多く、コミュ障を自称する者もよく見かける。 しかしながら、彼ら彼女らはニコ生においては人気を集める。 配信を通じて、キャラ付けができていれば、 「コミュ力」の低さはそこまでのハンデとはならない。

では、生主にとって重要なスキルとは何だろうか。 それは前述した2つのコミュニケーション回路に着目すれば良い。

まずは、コメントに関するスキルである。

面白い配信にするためには、流れるコメントをいかに拾っていくかが重要だ。 もちろん少ないうちは丁寧に拾っていけば良いのだが、 ある程度のコメント量になってきた場合、 配信が面白くなりそうなものを見逃さないことが重要になる。

一方、コメントをするリスナー側にとっては、 それによって配信そのものに影響を与えることで、 ある種の達成感を得ようとしている。 もちろん、生主のクセや状況に合わせてコメントをすること自体が、 リスナー側に求められるスキルでもあるが、 生主側でも、期待されるコメントを引き出すような、 それとない誘導なども必要となってくる。 そうでないとリスナーの不全感が募り、配信が変な方向へ行ってしまう。 例えば外配信などでは、ただひたすら無茶な要求を出し続けるだけになってしまい、 警察沙汰になって配信が止まるか、裸になって放送権限を停止されるか、 あるいは結局、ただ反感を買って終わるだけの配信になってしまったりするだろう。

いいリスナーをどれだけ集められるのかが、 配信自体の面白さを大きく左右するわけで、 この、 コメントを引き出し、拾い、配信に反映させていくスキル は最重要である。

もう一つのスキルが、生主間のコミュニケーションである。

生主は自分自身のスタイルを確立し、「キャラ立ち」していることが必要だ。 そうすることで、リアルにおける「コミュ力」不足は十分補える。 そして、人気のある生主というは、 とにかく 他の生主の「キャラ」についてもよく調べており、大抵が熱心な勉強家 である。

さらに、他の生主との絡みをうまく配信に載せていくスキルも必要だ。 明らかにPCに疎そうな女性生主が、 「XSplit」だとか「ステミキ」だとか言いながら、 映像・音声デバイスの論理ルーティングをこなしてしまうのだから、 すごい時代になったなぁ、とか思うわけだ。 映像の見せ方、音量調整などを含めて一人で全てをこなす 姿は、 ぜひとも公式生やチャンネル生にも見習っていただきたい所存である。

各セグメントによる、共通前提の違い

ところで、公式生や超パーティーなどの視点からみて、 こうした生主が扱いづらいのはなぜだろうか。 よく「素人だから」とか「社会性がないから」とか言われがちだが、 それは公式生(あるいは大人)の理屈である。

生主は、必ずしも基本的な社会性をベースにして、配信を作り上げているわけではない。 そうした「表の論理」は通用せず、あくまで「キャラ」が関係のベースとなっている。

普段は意識しないことだが、他者の社会性を信頼しつつ、 コトを進めることができる空間は、思ったより狭い。

ユーザー生の場合、様々な人種を包摂している。 ちゃんと調べたわけではないが、感覚的には中間層の存在感が薄い。 学生、無職、メンヘラといった伝統的なネットユーザー層から、 普通接することのない全身刺青、前科者、風俗嬢、AV監督、 そしてスポンサーとなっている疑いのある、実業家、社長業、資産家など、 ここまでの幅をもつ世界は中々無い。 (もちろん勤め人も多いよ、人口比からすると薄いってだけで)

まあ何にしても、そうした 共通前提の少ない世界を渡り歩くために必要なのは、 あくまで配信上の「キャラ」なのだ 。 それを意識しないでいると「扱いづらい」という評価をせざるをえないのは当然なのだが、 「キャラ」を踏まえた交流が想像できる側からすると、 異なる文化圏の人間と交流する姿勢の無さ、ひどくね? としか映らないわけである。

ちなみに、多様な人間を擁する芸能界の共通前提が、 興行にまつわる「暴力」であることは言わずもがなである。怖い。

なぜユーザー生の生態系が、コンテンツとして強力なのか

これまで述べてきたように、 ニコ生は人と人との間で起きる、幾つもの相互作用によって成り立っている。 そして全ての人間に、その回路は開かれている。 生主ならコラボすれば良いし、リスナーならコメントすれば良い。

そしてだ。配信の面白さを決定付けているのは、 これらの回路に「運や偶然」の要素が含まれるということだ。

コツを掴むと、繰り返し相互作用を体験できるようになってくるが、 必ずしも目論見通りにコトが進むわけではない。 そして逆に言えば、単なる運によって、想像以上の楽しさに遭遇することもある。

聞くところによると、麻雀が面白いのは、運と実力の割合が絶妙だからだという。 また、大流行なソシャゲ、パズドラのヒット要因も、 かつての「作業ゲー&運ゲー」の世界を「実力ゲー&運ゲー」へと転換させたところにある。 (厳密には実力ゲーに感じられるってだけだけど……)

要するに、 運と実力の入り混じった世界こそ、現在のコンテンツの王道 と言え、 ニコ生は奇しくもそれを内包しているサービス だったのだ。 つまり、ニコ生というのは、 生身で遊ぶコミュニケーションのゲーム ってわけ。

こう考えると、ニコ生がかつて黒字化を牽引していたことは、 今考えると何ら不思議なことではないよね。

原点はどこだったのだろうか

間違っていたら申し訳ない。僕はAKBについては良く知らないのだが、 どうやらあれは、「普通の女の子」が理不尽さを前に頑張っているのを応援するものらしい。 でも「握手券」なんて、 コミュニケーションに金を払うこと そのものじゃないか。 ところで「認知」に至る 「努力と偶然」の割合 ってどんな感じ? ―― 一流でも何でもないものを囲って、コミュニケーションゲームをすることが、 コンテンツの新たな地平なんだと思うんだよね。 中身じゃなくて、アーキテクチャがその本質なわけで。

しかしニコニコの運営諸氏は、 コメント機能やアンケ機能のついた、安価な配信環境がニコ生だ! とか本気で考えてるのだろうか。 「ぜひ良いソフトを配信させてください、低コストですよ」とか?

いやいや、コメントという仕組みが生み出すコミュニケーション自体が、 人を引き付けるコンテンツの核なのであって、 画面に映るものは突っ込みどころ(キャラ立ち)があれば、 それだけで万人を集めるようなモノである必要はないって、 ニコ動の初期にもさんざん言われていた原点だったと思うんだけど。

熱量は取り戻せるのだろうか

まあしかし、考えてみると、僕自身がこんな不平不満を言いながらも、 未だにニコ生をチェックし続けているのは、 「もしかしたらまたあの面白かった体験が得られるかもしれない」といった期待が捨てられないからで、 一種の中毒症状なのだろうとも思う。たぶんソシャゲにハマるのと近いのかな。

実際、ニコ生は時間が経つにつれ、配信枠が増え、気軽に配信ができるようにはなったが、 配信の内容自体が薄くなってしまい、楽しむためのハードルは、むしろ上昇しているように思う。 人間がつまらなくなっているかというと、そうでもなさそうだ。 規約上、他配信者への妨害行為に厳しくなったため、生主同士のコミュニケーション密度が薄まり、 摩擦による熱量が下がってしまったような感じである。

伊予柑2肝入りの「ナマケット(決まった枠で配信の面白さを競う企画)3」は、 瞬発的な熱量は出せるのだけど、枠の日時が限定されている以上、 やっぱり場が芸を期待してしまうところが、ちょっと残念。

もしかしたら、百花繚乱4氏の言うように、一度枠を減らしてみるというのもアリなのかもしれないなー。 枠が取りにくい程度で去るユーザーは、今ならTwitCastingとかに行ったほうが幸せになれそうだし……。

うーん。

――以上、第5回でした。

今回は色々手こずったので、1週間以上も開けてしまった。 週1通以上は書きたいんだけどなぁ。

もっとライトな感じにしたいのに、分量は増える一方だ……。

雑記:ブロマガ仕様についての要望

● aタグからname要素を削除しないでください。

長文のときTOC入れたいし、脚注アンカーなども機能しないじゃないか。

● メルマガなら、メールの整形をまともにしてください。

箇条書きの整形くらいしてください。 pタグ使ったら、行頭に全角スペース入れつつ、1行空行が入るとか、 なんか妥当な感じに整形してください。

● 普通のアクセス解析くらい埋め込ませてください

ニコニコの持つ細かいセグメント情報をよこせとは言いませんので。

と、そんな感じ。

僕は移動中の暇つぶしとして、メールで読まれることを期待しているんだよね……。 じゃなきゃこんな長文、誰も読まないって。

EPUBは知らんので今度試そう。

ではまた。

脚注:

1 ニコ生周辺に関わる用語の使い分けについては、 「『ニコ生/ユー生/公式放送』をめぐる会話」 に詳しい。 僕はユーザー生放送の視点で書いているので、 『ニコ生=ユーザー生放送』とした。

2 2009年あたりから「おい、ゆとり!」シリーズ配信でメディアに注目されるが、 のちに「NHKBizスポ』」のテロップでドワンゴ社員であったことが発覚したステマ先輩。 コミュニケーションが価値であることを早くから指摘していたにも関わらず、 なぜか配信の質に走ってしまった残念な人。現在はナマケットディレクター。

3 とは言っても、「ナマケット」は生主らにアクセントを与えているし、当たり企画だと思う。 あれだけ見てもニコ生の良さには気づきにくいが、入り口にはなっていると思うので。 ただ問題は超会議における「リアルナマケット」だ。生主ってのはその人自体じゃなくて、 配信画面を通してこそ面白さを出せる存在なんだけどなぁ。

4 ニコ生初期から活躍する生主。日々血反吐を吐くほど頑張ってる人。 運営側で活躍する中では、もっともニコ生の良さと理解しており、 インタビュー記事などは一読に値するものが多い。 よく過疎乱先輩などと揶揄されるが、 動画から入った人はニコ生アラートとか入れてないってだけで、 コミュ人数の割には過疎に見えるだけで、普通によく考えられた配信。


個人でモノを売るために――生主の場合

個人でモノを売るために――生主の場合

はじめに


もう1年以上前の話になるのだが、かつてゲーム実況者による旅行DVDの販売が問題視されていたことがあった。 要するに、ゲーム実況動画という他人のふんどしで得た知名度を、 それとは関係ない旅日記DVDで換金するのはいかがなものか、といった話で、 嫉妬やらなにやらが渦巻いた感じで、当時だいぶ炎上していたと思う。

まあ僕には、彼らが誰なのかとか、さっぱりわからなかったのだけれど、 スタンスとしては「別にいいじゃん買わねーけど派」であった。 いや、むしろ「叩いてるお前らもやれよ派」と言っても良いくらいに考えていた。

特にこの場合、変な業者を絡めていないところが評価できた。 どうやらゲーム実況は人気らしいから、目をつけられていてもおかしくはなかったはずだ。

しかしその一方、生主(=生放送をするユーザー)は、彼らに比べたら中途半端な存在である。 なぜなら、人気が中途半端というか、人気の数値と売上の相関性が低く、 数字だけで判断せざるを得ない部外者から見ると、グッズ類の売上が予想がしづらいのである。 であればなおのこと、自力でCDやらグッズやらを制作するべきであって、 変に業者を挟まないことが立ち回りとして重要となる。

改めて、巨大な同人の世界

日本にはコミックマーケット(以下コミケと略記)という世界最大の同人誌即売会がある。 1975年から続くイベントであるが、年々サイズが拡大し、 金額的には1回開催で50億円が動いている。

また、コミケ以外の同人誌即売会も、ほぼ毎週どこかで開催されており、 イベント後には専門書店に卸され、 全国展開されていたり する。 それらを合わせると、ざっくり300億円の市場である。

ところで、同人誌即売会とは言ったものの、流通しているのは本ばかりではなく、 音楽CDやDVD、その他グッズ類も含まれている

また、作品の内容的には、商業漫画に対する二次創作物が中心であることは間違いないのだが、 それ以外の オリジナルの作品も許容されている

つまり、コミケをはじめとした同人市場は「非商業の流通市場」を担う場として、中心的役割を果たしているわけだ。

モノの作りの手段は、とっくにコモディティ化している

この、「非商業の流通市場」の歴史は長く、コミケも約30年の歴史がある。 そして、作り手(=サークル)の数も相当であり、それは1回の開催で3万を超える。

つまり、すでに作り手として「非商業の流通市場」にアプローチするための情報は世の中にあふれており、 ほとんど検索すれば集められる ものばかりだ。

以下に、その概略を掴むための項目を並べておく。 毎度のことだが網羅する気はない。 興味のある人は適当に検索して深堀りしていくのがよいだろう(ない人は飛ばしてOK)。

制作ソフト類

Adobe Illustrator(月額2200円でよい。 他のツールの場合でも、だいたいこいつに貼りこんでEPS出力出来るようにしとくのが無難)

製造サービス(相場を確かめてみると、意外と安い)

● CD/DVDプレス(デザインの雛形がダウンロードできる)

● 同人グッズ製作(マグカップ・マウスパッド・その他色々ある)

● 同人誌印刷(入稿方法をよくチェックすること)

流通と販売(だいたい6~7掛けであることがわかる)

● 同人誌委託ショップの、サークル委託に関するページ (ジャンルが限られるが、合致すれば全国)

2chグッズ系ショップ(おそらく通販に頼ることになる)

JANコード取得+Amazon e託(6掛けなうえ年会費もかかるが、Amazonに置ける)

人脈に恵まれやすい環境

ニコ生のすごいところの一つに、リスナー側にも才能の塊みたいな人がゴロゴロしている点が挙げられる。 いわゆる「職人」と呼ばれるタイプの、手を動かす系の人たちだ。

動画の視聴者はかなり多いが、「職人」の濃度は極めて低い。

一方ニコ生は、母数が少ないわりに、その濃度が高めの感触がある。

彼ら「職人」は普通の生主に比べたら、あまり表に出ることはないし、 生放送をしている際も、特に人を多く集めているわけでもない。 しかし、彼らが生主の手を貸すと、生主のキャラクター性をはじめ、 パッケージ化におけるクオリティが急激に上昇する。

その現象のなかで、普通に数多く行われているものは、コミュニティのサムネイルだろう。 ある程度の規模のコミュニティになると、自然発生的にサムネイルが提供されていく。 また、「画像コンテスト」と呼ばれる、よくあるリスナー参加型企画においても、その様相は確認できることだろう。

マチュアだからこそ、人間関係

要するに、生主は自分のリスナーの中から「職人」を募り、 協力してもらうことで、何かを作る際のクオリティの底上げがしやすい環境にある。

ただ、そこで一番難しいのは人間関係だろう。

関わる者が多くなるということは、作品のクオリティを上げることもあるだろうが、 それと同時に、意見が衝突するリスクも高くなるということだ。

一番多いのが、途中でやる気が無くなるという問題である。 よって、最初は工程が短く、単純なものからトライするのが良いだろう。

あと、生主の場合に特に懸念される問題は、 リスナーを無償で使える道具だと考えている人が多いのではないかということだ。 運良く「職人」が盲目的な信者リスナーであった場合は、まあ好きにすればいいと思うが、 それが当たり前という感覚は、トラブルの元となりがちなので注意が必要だろう。

僕のオススメは、少なくてもいいので一律に寸志を渡すことだ。 まあ、売上が明らかに立たないとか、払うと赤字になるなら無償でもいいと思うが。

まあでも最終的には「報告・連絡・相談」をマメにやることが大事だろうね。

業者でダメなのに自力で売れるわけがない?

「業者が失敗する中、素人がトライしてうまくいく可能性があるだろうか」

といった疑問はもっともだ。

たしかに、ニコ生周辺に関して言うと、出版業者が絡んだ形でのCDやDVDなどが、 過去何度かリリースされているが、売れ行きは芳しくないようだ。

それはそもそも企画自体に問題があったり、 あるいは業者が生主の人気の質を見誤っていたりするのがその要因である。 その業者は、その生主やリスナーのことなどを、果たしてどこまで理解しているのだろうか。

とはいっても、自分自身でも、それはまだ見えてないのかもしれない。 ただ結局、 手探りが必要ならば、個人の采配でもって活動する方がやりやすい はずだ。

そして、これまで見てきた中でもわかるように、 企業でないとできない部分というのはそこまで多くない 。 どうしても必要なのはDVDプレスなどの取次程度で、あとはちゃんと調べて実行すれば、作品を世に出すことは可能だ。 そうすることで、中間業者のコストを中抜きできれば、 もしかしたら現状で失敗している部数だったとしても、 採算がとれていた可能性もあった はずだ。

まとめ

長々と説明してきたが、結局のところ、自力でなんとかできそうな条件はすでに揃っていることがわかるだろう。 必ずしも大層な事務所等に所属することだけが道ではない、というかむしろ、 商業ラインに乗せないほうが良いケースの方が、なんだか目立つ気もする。 仮にプロとしてやっていきたいのだとしても、商業と自主・同人をうまく切り替えながら両立する作戦は有効だ。 古い慣習に囚われた契約に縛られるだけ、この業界で損だと思う。

ところで、初めに触れたゲーム実況の旅行DVDは、中身は知らないとはいえ、やり方としてアリなのであるが、 一方、某雑談生主によるタイ旅行DVDは、品質だけでなくやり口も非常に残念なものであった。

横山緑 暗黒放送SP 横山緑にみんな騙された! タイの秘境(卑怯)旅行で全暴露 {DVD}

安易に業者を頼り、編集も自分でやらず、音量調整も酷い。 作品で金をとる自信がないから、制作販売の責任を業者に預け、 自分は知らぬ存ぜぬで通す魂胆だったのだろう。

次の映像作品は、完全自主制作の自主流通を期待したいものである。

――愚痴っぽいけど、第4回は以上です。

次回はちょっとずれるけど、生主とは何かについて、改めて考えてみたいと思う。

めまい日記

もう当時以来読んでいないから、16、7年ぶりくらいだろうか、 思いつきで物置から『ママレード・ボーイ』を引っ張り出し、 熱風で焙りながらクリーニング、ベッドの脇にその8冊を積んだ。

まったん(という生主)曰く、「恋愛の教科書」とのことなのだが、 まあ確かにいろんなシチュエーションが組み込まれてはいるなぁとは思ったが、 やっぱりこの時代の少女漫画はセックス以前がテーマ対象だし、 これを教科書だと思ってたら、そうなっちゃうよなぁ、とも思った(根深いわぁ)。

まあそれはいいとして、文字通りの甘くて苦いマーマレードな記憶が引き出されてしまうせいだろうか、 ストーリーに逐一身悶えしながら、何度もクラクラとめまいを起こしてしまった。

なかでも最高にヤバかったのは、やはり最終巻のホテルの部屋の入口シーンであろう。 なにこの背徳感、どこの昼メロだよ、などと呟きながらも、またクラクラしてる。

いやなんかもう、面白くなっちゃって、しばらく眼前の風景が、回転するに任せていたんだけど、 嫌な予感がして、ちょっとぐぐってみたら、一応医者行ったほうが、よさそうな感じ……。

というわけで、三角関係描写だらけのアニメ版よりも、原作がオススメです。

ではまた。


素人、ニコ生で金を得る――その心構え

素人、ニコ生で金を得る――その心構え

はじめに

まあ大体ここ1~2年くらいだろうか、ニコ生(=ユーザー生)に入り浸っていると、 生主(=生放送をするユーザー)に関するグッズの企画商品をよく見かけるようになった。 僕が今使っているマグカップは、生主のイラストが描かれたものであるし、 注文しようと思っていたのに売り切れてしまったマウスパッドも、 いわゆる有名な生主達のイラストが入ったものだ。 (トラックボール派には使い道がないのだが、やっぱり欲しい)

ただこうした生主という素人がお金を得ることについて、 否定的な考えを持つ人はとても多いように感じる。 おそらく「金銭とは労働でもって得るものであって、 ニコ生など趣味の領域にそういったものを混ぜてくるな」という考え方であろう。 まあ気持ちはわからないでもないのだが、 それでもやっぱりこの手の経済活動は、今後しばらく続いていくと思う。

とはいってもやはり、いくつかの心構えは必要になってくると思うので、 今回はそのあたりを考えてみたい。

生主はプロか、アマチュア

ところで前回は、プロの論理というものについて書かせていただいた。

プロと覚悟と世界とお金――もう、めんどくせーよ

プロの原則とは「何かで生計を立てる覚悟を世に宣言すること」であったが、 これに当てはまる生主はいるだろうか?

生主として配信をすることをメインにして生計を立てると宣言したケースは、 僕の知る限りでは数例しか無い(それだけでも凄いことだとは思うのだが)。

ただまあ、生主の人数は数万と言われているわけで、 それらは特殊なケースと考えて良いだろう。

よってここでは、その他大勢の普通の生主について考えつつ、 アマチュアが金を得る方法についての概略を示したい。

マチュアの原則

さて、前回に習って今回も、とりあえず「アマチュアの原則」について考えよう。

まず、プロと違ってアマチュア「生計を立てる必要がない」 という点がポイントだろう。 そして、 プロフェッショナルのように、 「宣言」する必要も、基本的には無い

よって、アマチュアの原則とは、 「何かを愛していること」 、ただそれだけである。

(それぞれ宣言(profess), 愛する人(amator)が語源らしい)

マチュアが外に表現を始めるとき

では、このシンプルな原則から、どんな欲求が生まれるだろうか。

● 「生まれたものを見せたい」おそらく赤子をFacebookに貼るよりは共感される。

● 「知識や技術に、より熟達したい」上達はそれ自体が喜びでもある。

● 「継続したい」この行為を長く続けたい。ルーチン化したい。

● 「価値を見極めたい」自分の生み出したものがどれくらいの価値なのかが知りたい。

● 「お金がほしい」うまく出来るようになったので、対価がほしい。プロへのステップとして。

欲求は人それぞれだろうから、これくらいにしておくとして、 これらを満たすために必要な事は何か を考えることが必要だ。 前回と同じく、自分の中で整理しておくと、 何をやっているのかわからなくなったとき、意外に役立ったりするので、 各自やってみてみるといいかもしれない。

マチュアでも、お金を扱うにはやっぱり覚悟が必要だ

仮に、前項で整理した中に「お金」を欲求に入れたとしよう。 その場合に必要な物はなんだろうか。

プロの論理を知ったものであれば、それは 「覚悟」 であることは想像がつくだろう。 お金を得ること自体は、アマチュアにとっては本来無関係のものである。 それはある意味、プロの領域の侵食でもある。 そこに侵食していく場合、ある種の覚悟が必要になる。 ではそれは、どのような覚悟なのだろうか。

それは 「信用」 である。プロにおける「信頼」に近いのであるが、 後者は未来を託すイメージがあるが、アマチュアにおいてはそこまでの期待はできない。 なぜなら、彼らは「生計のために今後も継続する」といったスタンスではないからだ。 つまり、アマチュアがお金を扱う際に心がけなければならないのは、 少なくとも 顧客に対して「信用」される振る舞いをする「覚悟」が必要 なのである。

これは、「未来に期待してくれ」とかそういうことではなく、 「こう積み重ねてきた」といった過去の蓄積が問われているといって良い。 いやいや、そもそも最初はだれでも未経験じゃないか、と思うかもしれないが、 必ずしも実務経験が必要という意味ではない(もちろん、あるに越したことはないが)。

ここで必要なことは、

● 何でもいいので、潜在顧客に対する約束を果たすことを継続すること。

● 不安感を与えないよう、告知をしっかりすること。

● サンプルを用意し、事前に品質を示すこと。

といった、わりと当たり前のことを、事前にやることである。

蛇足ながら付け加えると、必ずしも品行方正の善人である必要はない。 執行猶予期間中のオヤジでも商売はできているし、 どっかの動画で黄色い声援を浴びさえすれば、 大抵の悪行は無かったことになったりしている。 ちょっと腹の立つ話ではあるが、 アマチュアの真似事でも芸能界と似た現象が起きるのだから、 見方によっては結構面白くもある。

もっとお金を扱うコツを掴もう

当たり前の話だが、コンビニでバイト中、レジを扱ったことがあるからといって、 お金を扱えるといえるかというと、そういうことではないだろう。 なぜなら、「信用」を担保するのはそのコンビニであって、 あなた自身ではないからだ。

さて、「コンビニバイトの僕も、ちょっと特技を生かして、お金を扱うコツを掴んでやろう」と考えたとしよう。 でも全くのはじめてだと、なかなか検討がつかないと思う。 そのあたりの具体的なアプローチについては、次回以降に簡単にまとめてみたい。

おそらく、わかり切った人にはあたりまえの話になってしまうかもしれないが、 ニコ生じゃあ、そうはいくまい。でも先人は多いぞ、という、そんな感じになる予定。

――以上、第3回でした。

マチュアの可能性についてはまだまだ書き足りないので、また近いうちに書きたい。 というか、今回の記事を書くにあたり、余計なものが膨れ上がりまくって収拾がつかない。 うまく整理出来ればいいのだけれど……。

雑記

昨日の岡田斗司夫ゼミ生放送を聞いていたところ、 生主が銀行口座を晒す件について、面白いといったポジティブなニュアンスで話されていた。

ニコ生岡田斗司夫ゼミ2月号延長戦(会員限定2)

プロデューサーS田氏まで、公式生はツマラナイと言い出す始末。 (実は氏はフリーランスであって、ドワンゴの人ではないとのこと。なるほど!)

ブロマガのユーザー開放で、参加者が一気に増えた話からそういう話になったようなのだが、 生主に着目するところは流石だなぁと思った、お二方とも。

また、誰と対談するかという話で、著名人よりも生主と対談をしたいといった発言もあり、 もし実現するとすれば面白そうだ。

やっぱニコ生だよねー。

熱い時代はとっくに終わってると思うけど、まあ、成熟期的な意味ではまだまだかな、と。

ではまた。


プロと覚悟と世界とお金――もう、めんどくせーよ

プロと覚悟と世界とお金――もう、めんどくせーよ

はじめに


正直な所、僕は「プロになるために」とか、「プロの倫理とは」なんて話には興味が無い。 そんなの、そこら中に溢れているじゃないか。 しかもみんな一応、生業を持って生きているもんだから、 一家言持ちたくて仕方がないらしく、ややこしいことこの上ない。

そんなことより今着目すべきは、有象無象のアマチュアの側だってことは間違いはあるまい、 愛をこめて。

ただ、たとえ自分がアマチュア側だとしても、 「プロフェッショナル(以降プロと略記)の論理」について整理しておくことは、 もしかしたらこの志低い活動のヒントとなるかもしれない、そう思うわけである。

こうした定義の整理作業をすることで、 一家言の嵐からもたらされる、変な混乱と躊躇から自由となり、 もっと気軽な経済活動ができるようになることだろう。 例えば「お金をもらったらプロ」などといったありがたいお言葉が、 実はアマチュアには関係のない話だってことはすぐにわかる。

というわけで今回は、この面倒くさそうな 「プロの論理」 を紐解き、 このもやっとした感じを整理しておく作業をしていきたいので、 とりあえずお付き合いいただきたい所存である。

プロ論はどんな構造をしているのか

さて、あなたにとって「プロ」とは何だろうか。

誰かから「お金」を受け取ることだろうか。 あるいは何かの世界に入る「覚悟」のことだろうか。 それとも、芸能界のような「職能世界(=ここでは職能団体っぽい共同幻想の意)」 における規範のことだろうか。

ちょっと検索して調べてみると、上記以外にも 「信頼」「専門性」「生業」「厳しい姿勢」「約束を守る」 などのワードを多く見かける。うーん、どれも正しいような気がする。 ということは、やっぱり人それぞれってことなんだろうか。

いやいや、プロであることに対しての思いは人それぞれ持っているだろうけど、 実はその論理構造はとてもシンプルだったりする。

それは、 ひとつの「原則」という根っこが有り、それ以外はそこから枝分かれしているだけ なのだ。(まあ、ありがちな構造であるのだけれど)

そしてよく言われる、面倒くさいドグマ(=教義)は全て、 ある「原則」から導き出される、枝葉の一つに過ぎない。

プロとは覚悟の宣言であり、自称するものである

「プロの原則」、それは 「何かで生計を立てる覚悟を世に宣言すること」 である(ゆえに自称が許される)。 ではその、「覚悟」とは何なのか。 それは、 「何かで誰かに便益をもたらし、対価を得ることを、継続する 」 ことである。 僕はこれをとてもシンプルだと思うのだが、みなさんはどうだろうか。

またここで触れておきたいのは、 「継続する」 という部分だ。 「生計を立てる」とは、この「継続する」を内包しているのだが、 少数で作るようなコンテンツの分野では、一発当てる的な力学や、 モノが良ければ変人OKな気運が強すぎて、 この点は見落とされがちな気がするので、あえて強調しておきたい。

まあそんなわけで、これが「プロの原則」であり、 あとはまあどーでもいい、とまでは言わないが、やっぱり枝葉の話である。

ではちょっと試しに枝葉を並べてみよう。

●「職能世界」……品質と対価のバランスを維持し、「継続」できるようにするために作る。

●「お金」……「生計」を立てるために得る。

●「信頼」……「継続」して取引するために獲得を目指す。

●「専門性」……品質を上げ効率よく「お金」を得る/「信頼」のために得る。

●「約束を守る」……「信頼」を得るために守る。

●「厳しい姿勢」……「約束を守る」ためにとる。

とうてい網羅はできていないし、そうする気もないので、暇な時にでも整理するといい。 単語にマル描いて矢印で繋いでみると、自分なりのプロ観が出来ていいかもね。

ただ間違いないのは、 原則が最上位であり、枝葉につながる矢印には方向がある ということだ。

つまり、「金銭を得る→プロ」は成り立たないし(今回のブロマガの一般開放のことだ)、 「専門術や知識を習得している→プロ」も成り立たない (資格自体でプロになれないのはこのためだ)。

そしてもう一つ間違いのないこと、 それは原則が 宣言 である以上、枝葉の一部を欠いていてもプロは名乗れるということだ。 ただ、評価が下がって継続性が危うくなったり、覚悟が虚しく響いて聞こえたり、 組織を変えざるを得なかったり、まあただそれだけの話である。(身につまされる話である)

ブロマガはインフラだ(今のところ)

最後に、今回話題にしているプラットフォームである、 ブロマガの説明ページを確認してみよう。

ブロマガ - ブログとメールマガジンがひとつになった「書くニコニコ」 - ニコニコチャンネル

においては、「月額課金や記事ごとの課金機能を利用すれば、 プロとしての活動が可能となります。」

といった形で表現されている。

これはとてもサービスインフラ屋さん的な、 ニュートラルな表現である(超会議とは大違い)。 すなわち、プロとしての活動が 可能 となるだけであり、 課金をした所で、プロであるという考え方は強要していない。

まあ誰であろうと、課金したいコンテンツがあれば課金をする、 ただそれだけのことだよね、当たり前だけど。 プロを目指すもよし、飲み代欲しいなーもよし。 ホント、どう使うかは自由だ。

お金を受け取ったら、何かの責任は発生するだろうけども、 変にプロとかに拘る必要はまったくないし、 ルールは自分で模索すればいいんじゃないかな。

という僕の一家言でございました。(よく考えたらすごく普通だ……)

――さて、第2回は以上です。

次回は本題、アマチュアが金を得るときに何を心がけると良いのか、などを考えてみたい。

DMのコーナー

前回の記事の配信後、ある方からTwitterにてDMが届いた。意訳すると、

カンブリア宮殿ネタは面白かったのに、 初回から飛ばしすぎで、内容についてのコメもできねーよコラ。

との旨である。

カンブリア宮殿で語られないニコニコ黒字化のホントのところ - 雑文

嗚呼、たしかにこの記事と比較すると、 前回のは確かに詰め込みすぎの飛ばしすぎたなこりゃ。

そうした反省から、しばらくは初回と重なることを気にせずに、 丁寧に書いて行きたいと考え、今回はこんな感じになったんだけど、 なんかもっと柔らかく書きたいなぁ。あと文字数を半分くらいに減らしたい。 (じゃないと続く気がしない……)

超会議での生主の扱いの根本的勘違いも批判もしとかなきゃならないな……。 なんか漠然としてて形にできるかわからないけども。

まあなんとなく時事ネタと絡めながらの方が楽しい予感がするので、 順番に読めばわかる、というような親切な作りにはならないかもしれないが、 パズルのピースを一つ一つ確認していくような感じで、 お付き合いいただければ幸いです。

ではまた。


ブロマガで素人に課金?いいじゃないか

ブロマガで素人に課金?いいじゃないか

はじめに


先日、ブロマガが一般向けに開放された。 特に 課金 にまつわる考察はいろいろあると思うけれど、 僕は ニコ生(=ユーザー生) の視点で、色々考えてみたいと思う。 (でも動画についてはちょっとよくわからないですすみません)

まあとりあえず今回は、 課金システムは欲しいけど、無くてもお金は動いてるよ 、という話。

今はまだない、課金システム

ブロマガの企画開発担当者氏によると、 将来的にはマネタイズ手法が提供されるとのことである。

ブロマガβ(一般ユーザー版)をリリースしました

しかし、課金可能になるかどうかは、やや怪しい雰囲気だ。 ニコニコポイントの交換とかに落ち着くのかな……。 まあいずれにしても、まだまだ検討中、といったニュアンスを感じる記事だ。

しかし僕はとりあえず、近い将来課金システムが、(審査などあるにしても) 一般ユーザにも利用可能となることを期待したい。

ニコ生経済事情の断片

ニコ生の経済原理については、それだけで長くなってしまうので 後日詳しく触れたいと思うが、ここではいくつかの事実だけを紹介しておく。

ニコ生において、お金が動くとき、それはたいてい、一般リスナーによる批判がセットでついてくる。 たとえば生主(=生放送をするユーザー)側が銀行口座を晒し、寄付を要求したとする。 すると彼らは「乞食」という言葉で生主側の倫理問題を指摘し、 「お布施」という言葉で「信者」リスナーの揶揄をする。 メンタリティー自体も単純な嫉妬とは言い切れない点で、とても面白いのではあるが、 しかしここで重要なのは、なんだかんだで、 やっぱりお金は動いている ということだ。

この経済圏がどれくらいの規模なのか、実態を捉えることは難しい。 とりあえず、銀行口座を晒し、住所を晒して、生きていける程度になっている人はいるし(彼氏ができたけど)、 安く店舗を借りて、綿菓子屋をやる姉さんはいるし(追い出されたけど)、 大阪に小さな居酒屋を持てるおっさんはいるし(採算取れてないみたいだけど)、 池袋に5000万の店舗を構えて生主を雇うことも出来た(そして失敗したが)。 ただし、これらは話題になりやすい極端な事例にすぎないことは付け加えておく。

とはいっても、もっと小さな金額、物品、ないしは便益(性的な意味を含む)を受け取っている人は、 かなりいるのではないかと、ニコ生界隈では推測されている。

ちなみに、彼らには、 一般的なステージで対価を得られるような、芸と呼べるものはほぼ無い し、 本・音楽CD・DVD・グッズなどを売っているわけでもない という事は、とても重要だ。 (もちろん、ステージに耐えうる人もいるし、DVDを売ってる人もいないわけではないが) このことは、既存のコンテンツ産業のセンスを持つ人からすると、 眉をひそめたくなる現実かもしれない。

別にクオリティは不要とか、そういうことじゃないんだよ

もちろん僕は、素晴らしい芸・良い音楽・質の高い文章には、 お金は支払われるべきだと思っている。 実際、漫画やCD、DVDを買うし、有料ブロマガもいくつか購読させていただいている。

ただ、そうした「販路の自由化・低コスト化」と「プロ意識による品質」によって コンテンツの未来が切り開かれるという考え方は、 1990年代後半のネット黎明期における、 (特に音楽関連で語られた)想像力の範疇で収まってしまっているというか、 伸びしろを思い描けてしまう感じが、どこか歯がゆい。

ネットネイティブ世代におけるもっともエキサイティングな未来は、 2008年辺りから始まった、ニコ生的な側に在り続けていると、僕は考えている。

想像できる課金開放後のブロマガの光景

ニコ生視点からすると、課金システムが利用可能となれば、 間違いなくユーザー間の集金システムとして発達していくことになるだろう。 しかし、おそらくそこには、意味の分からない文章が溢れることだろう。 (僕はこれを〈ローカルハイコンテクスト〉と名付けたいので、これも後日書いてみたい)

近い将来、よくわからない1行日記が1000円、5000円、1万円で売られていたとしても、 それは仕方のないことなんだと、あらかじめご了承いただきたい所存である。

それに、なぜか月額7万円とかのブロマガがポコポコと出てきたとしても、 生暖かい目で見守ってもいただきたい。どうせ入るのは1人2人だろうから。

ただ、多くの人が儲けられるようになるとか、 そんなことはあり得ないわけで、そういうことを望んでいるわけではない。 単に、少額で構わないから、もっと自由に経済活動が行われるようになってほしいというだけの話だ。

本当は、ブロマガである必要なんかないのに

ところで、ニコ生には、配信に対してお金を払い、広告をつける機能がある。 そうすることで来場者を増やしたり、延長に使えるチケットがもらえたりするメリットを、 生主に与えることができる。

しかしこの方法で生主を応援しても、払ったお金は生主の手には渡らない。 これは、この広告機能導入当初、よく批判されていたことでもある。

そんな状況が延々と続いてきた中、 課金システムが一般の手に届くかもしれない、という期待が持たれている点で、 僕らはブロマガに目を向け始めているというわけだ。

でも本来は、任意のユーザーに対して自由な金額の投げ銭が出来れば、それで十分なはずだ。

というか、プロの文筆業の方々のやる気と質を担保するためにも、 運営はさっさと投げ銭システムを開発し、早めに隔離した方が良い気がする。

あーでも、ユーザー間の投げ銭は詐欺対策とかめんどくさそうだし、やらないかな……。

やはり素人とはいえ、文章などならまだ課金可能としてもいいかな(手数料ガッツリ抜けるし)、 ってことなのかもしれない。

まあでも結論としては楽しみですね、という

色々考えてはみたものの、ハッキリしてるのは、 僕には思いつかないような使い方が、今後必ず出てくるだろうってことだ。

ニコ生の人たちは、新しいサービスに敏感な人が多い。 イノベーターとアーリーアダプター(要は新しもの好き)で構成された集団で、 そのサービスをどう使えばいいのか、配信しながら全力で知恵を出し合う。

どんな形になるのか、今から楽しみだ。

いずれにしても、2013年のニコニコにとって、 ブロマガの動向がカギとなってくることは、まず間違いないだろう。

――という感じで、初回本編は以上でございます。

というわけで、自分も始めます、ブロマガ

『ブロマガ』という名称は、そもそも『ブログ+メルマガ』の略なわけだが、 ニコニコ界隈では、アメブロなどの代わりに使うのが主流のようだ。 下手をしたら、Twitterの代わりになってしまうかもしれない雰囲気もする。

そこで僕はあえて、メルマガを意識して、やってみようと思う。 といっても、どうでもいい日記は書かないとか、ある程度のまとまったものが届くとか、ノッてるからって毎日更新しないとか、なんかそういう感じだろうか。

というわけで、右の 『メール配信を購読する』 ボタンを押して、 通勤・通学のお供にどうぞ。もちろんRSSリーダーでもいいけども。 ニコ厨はニコレポで。変人はepubで。

内容はまあ、書きたいことを書く方向で。 あと、ニコ生を知らない人を意識していきたい感じ。

ご意見・ご感想・取り上げて欲しいネタなどありましたらコメントとかで。 適当にTwitterやらで「読んだ」とかRTしていただけると喜びます。

ではまた。


カンブリア宮殿で語られないニコニコ黒字化のホントのところ

要するに僕はこのつぶやきについて、もうちょっと詳しく書いておきたい気分なのです。

えー、この文章は、カンブリア宮殿のニコニコ動画回を見たが、なんかニコニコって凄そうだけど、いまいち本当の所がよくわからないと思った方、あるいは「俺ニコ厨だし、見てて楽しかった~」な方、そして、ニコニコ生放送での番組収録風景を見ていなかった方に向けて、なるべくわかりやすく、黒字化の実態の説明を試みるものだったりする。

「こうやって黒字化したんだ! この先が楽しみ! 自分も見習おう!」

なんてお気楽な気分の方に、特に読んでいただきたい。

 

さて、みなさんはあの番組を見て、どんな感想を抱いただろうか?

上場企業とは思えぬ型破りの経営者(自称保守的)の川上氏の人柄に惚れた?

それとも、20代の8割が会員であることに驚いた?

4億円赤字を出してまで、幕張メッセのイベントを行う、理屈なき投資の姿勢に感心した?

そうだね。どの感想もだいたいあってるし、僕もそう思った。

 
でもね、冷静に番組を見ている人ならば、何かモヤッとした疑問が浮かんだはずだ。
 
「ニコ動はユーザが主役というけど、じゃあどんなユーザが黒字化を牽引したの?」
 
ってこと。
 
あなたはどう思いますか?
 
多分、予備知識がなければ、具体的に説明することはとても難しい。少なくとも番組からは読み取れないだろうし、場合によっては何か勘違いしてしまうような、そんな編集になっていたと思う。(カンブリア宮殿がそういう番組だってのはわかっちゃいるけどさ)
 
一方、普通にニコニコに接している人ならこう思うはずだ。
 
「たくさんのおもしろ動画を、コメント付きで、速い回線で見たい人がたくさんいるってことだろ? それと、どうやら政治やショッピング、科学の生放送で、座席を確保したい人がいっぱいいるらしい。だから、沢山の動画投稿者や、公式番組を作った運営さん、みんなで黒字化したんだよ! ロングテール!」
 
ってね。
 
えー、そうかなぁ。本当かなぁ?
 
そこで、このロベルト氏のプレミアム会員に関する統計を見て欲しい。
 
プレミアム会員数の増加傾向に関わる重要な点を引用すると(下線は僕が引いた)
2008年の末からプレミアム会員数が増え始めているがニコ生のユーザー生放送が開始(2008年12月12日から)と一致している。
 
これによると2009年10月18日から2009年11月17日の間にプレミアム会員になり、現時点(2011年10月7日)でプレミアム会員をこの1年間継続した人の割合が91.77%。
2008年10月18日から2008年11月17日の間にプレミアム会員になり現時点(2011年10月7日)時点でプレミアム会員をこの1年間継続した人の割合が脅威の97.08%。
2007年10月18日から2007年11月17日の間にプレミアム会員になり現時点(2011年10月7日)時点でプレミアム会員をこの1年間継続した人の割合が3年間継続した人より少し減って94.69%。4年継続の継続率が減っているのは生放送目的でプレミアム会員になっている人が多い3年目と比較して動画目的でプレミアム会員になった人は生放送目的の人よりも解約しやすいことが推測できる。
つまりだ、ユーザー生放送が黒字化の転機であり、ユーザー生放送には動画以上に中毒性がある、ということを統計が語っているんだよね。
 
ほら、カンブリア宮殿の番組内で、一般会員の座席の追い出しが、プレミアムを増加させ、黒字化の転機となったという話があったよね。
 
番組だけ見ると政治などの魅力的な番組において、追い出しが発生して一気に伸びたかのように感じる編集だったけど、それは全くの誤解。上述の引用からもわかるように、プレミアム会員の急増現象の舞台は、ユーザー生放送にこそ存在していたということなんだ。
 
(2009年12月からプレミアム会員が急増開始。黒字化は2010年1~3月に達成。小沢一郎会見は2010年9月。一般的な知名度を高めた会見だったとは思うが、少なくとも黒字化の転機ではなかった事くらいは読み取れるよね。)
 
ああそうですとも。お察しの通り、コレを書いてる自分自身、ユーザー生放送ばかり見ている人間だ。黒字化を無邪気に喜び、時に感極まる行儀の良い動画勢を冷ややかに見てきたさ。「僕らのお布施が、なぜ生放送のインフラ改善に使われず、赤字垂れ流しの大会議にばかり毎回つぎ込まれるんだよ!」なんてね。
 
しかし、もし自分がカンブリア宮殿で、川上会長の代わりに振舞えと言われたらどうだろう。おそらく僕も、スタジオ収録時の取材VTRの中で、ユーザー生のためだけに人生コンテンツ化した人や、その手の人だけが住むシェアハウスなんかの風景を唐突に突きつけられれば、落ち着きを失い、苦い顔をして、これはユーザー代表じゃない、的なコメントを、同じようにしたと思う。
 
僕が思うに、カンブリア宮殿の取材スタッフはとても優秀だ。「よくここまで的確に、黒字化当時の現場を知る者を突き止めたね」と言いたい。ただ、川上会長という人物と、そのビジョンに着目するならば、この部分は不要だったのも確かだ。
 
ユーザー生放送なんてものは、明らかに動画に比べてパッケージ化しにくいから、極めて売りにくいし、将来のライトユーザにとってはコアすぎるし、そして何よりも、投資対象としてリスクが大きすぎるだろうからね、色々と。まあ妥当だよ。そんなことくらいわかってるさ。ユーザー生放送発足から今現在まで、何度も繰り返されてきたことだから。
 
だから僕らユーザー生放送の人たちは、そうした思いを内に秘めつつ、ライトユーザで埋め尽くされるその日まで、ニコ生プロリスナー(主に雑談女性担当)のもとでチャンスをうかがうしか無いってわけ。
 
以上、ニコ生中毒者からの、一見解ってことで。
 
ではまた。